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日外アソシエーツの出版物で、雑誌や新聞に掲載された書評や、著編者による自著紹介を記したブログです。

   
カテゴリー「装いのアーカイブズ」の記事一覧
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「出版ダイジェスト」2010年2月21日(第2185号)の特集「かわりだね文化史」に小社刊「装いのカーカイブズ」が紹介されました。

装いのカーカイブズ平井 紀子著
装いのアーカイブズ
―ヨーロッパの宮廷・騎士・農漁民・祝祭・伝統衣装
2008年5月26日刊
A5判 256頁 本体3,200円
発行/日外アソシエーツ・発売/紀伊國屋書店

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平井 紀子著
装いのアーカイブズ
―ヨーロッパの宮廷・騎士・農漁民・祝祭・伝統衣装
2008年5月刊 A5判 256頁 本体3,200円
日外アソシエーツ発行/紀伊國屋書店発売

■文献から見たヨーロッパの服装

 服飾の歴史は、人間そのものの歴史ともいわれる。平井紀子著『装いのアーカイブズ』(A5判・245頁・3200円+税)は、中世から近代ヨーロッパの服飾文化を図版とあわせて解説したもので、読んで見て楽しめる一冊である。

 本書は、階層や機能、服種により類別して解説。「君主および皇帝・皇后の服装」の章ではフランス、トルコの権力者の衣装をとりあげる。

 フランスの18~19世紀の宮廷衣装は服装史上もっとも優雅で華麗といわれる。冒頭はマリー・アントワネットの宮廷衣装。次が皇帝ナポレオンの宮廷礼服で、図版の解説、典拠文献、解題と展開。革命以後の洒落者たちの出現、ナポレオンの宮廷衣装、さらにナポレオンの繊維・服装産業への復興政策にも言及。ナポレオンは革命により衰退したレース産業復興のため帝政時代の宮廷衣装に再びレースを取り入れたという。

 「祝祭服・儀礼服」では、ウェールズ・ドルイドの祭礼服、聖週間の行列衣装、ロマン主義時代の結婚衣装、白糸刺繍の先例服等々。

 フランス、ブルターニュ地方のパルドン祭の老女の服装もその一つで、<中年を過ぎた女たちは白いレースの丈の高い伝統の円筒形の帽子で髪をまとめ、だぶだぶの黒いスカートの上に前垂れをかけて>教会へ出掛けるという。

 「作業服・農民服・職業服」では、ラップ人の漁労服、サルデーニァ島のパン屋の主婦、チロルの猟師、イタリアの帽子売り、ドイツの飛脚等々。

 「戦士の服装」「地域の伝統衣装」「スポーツ服、遊技服」にもそれぞれ一章をあてている。

 著者は大学卒業後、母校の文化女子大学図書館に勤務。同大学は「服飾稀覯文庫」を所蔵するなど世界でも有数の服飾専門図書館である。著者はこうした文献に司書として携わった経験を生かして興味深くまとめている。

 左の写真は、「戦士の服装」の中の巨大なスプーンを持つイェニチェリ(オスマン・トルコ、16世紀?)。このスプーンは食事の際、兵士にスープを配るときに用いられた。

装いのアーカイブズ挿絵装いのアーカイブズ表紙


                  



<出版ニュース 2008年7月上旬号 12頁「情報区」より転載>
装いのアーカイブズ平井 紀子著
装いのアーカイブズ
―ヨーロッパの宮廷・騎士・農漁民・祝祭・伝統衣装
2008年5月26日刊
A5判 256頁 本体3,200円
発行/日外アソシエーツ・発売/紀伊國屋書店

「衣」のフィルターから人間の文化を見つめる
「図版解説」は歴史の奥行きの深さを開く  鷲見洋一

 ふつうの単行本でありながら「アーカイブズ」と名乗る、おもしろい書物である。
 読んでいくに分かってくるのだが、本書の著者平井紀子氏は、大学図書館に長年勤務した経歴を持ち、とりわけ服飾関係の資料を扱ってきたベテランなのだ。「装いのアーカイブズ」というタイトルは、著者の側からすれば、ことさら構えた論文集でもなく、しゃれたエッセー集でもない、服飾の歴史をめぐる、ただのカードないし資料集ですという謙遜なのだろうが、これがなかなかどうして、けっこう読ませる書物なのである。

 実際はどうなっているかというと、膨大な世界服飾史から選り抜かれた60点の資料を手際よく分類し、記述・解説した、ある種の事典ないし案内書といった体裁をとる。「事典」や「ガイド」は、情報だけは正確でも、論文や評論に比べてどこか紋切り型で、個性に欠き、潤いに乏しいというのが常識であるとすれば、本書にはその常識を打破するに足るだけの、快い知的刺激に満ちた内容が横溢していることにまず驚かされる。

 平井氏が狙っているのは。よくある衣装の変遷史でもなければ、民族や地域単位の解説本でもなく、衣装の機能や服種による類別を主軸にすえた構成をとっており、従来の類書とは一線を画する編集である。対象とされる時代は中世から近代で、西ヨーロッパが中心になるが、「衣」というフィルターを介して「人間の文化」を見つめ直そうという著者の企図は、この卓抜な視座設定のおかげで、みごとに成功しているといえよう。

 全体の章立ては六章構成で、第一章「君主および皇帝・皇后の服装」、第二章「戦士の服装」、第三章「祝祭服・儀礼服」、第四章「作業服・農民服・職業服」、第五章「地域の伝統衣装」、第六章「スポーツ服・遊戯服」となっている。

 記述の単位は、取り上げる服ごとに数ページ程度の分量だが、かならず図版が数葉添えられ、1.「国・地方・民族」、2.「時期・時代」、3.「図版解説」、4.「典拠文献」、5.「解題」という具合に、きちんと区分けされている。よくあるべったりとした語り口の、長々しい文章体ではない、辞書風の清々しい構図が最大の特長である。

 まず、3.「図版解説」の部分は、著者が自由に筆を揮うページで、歴史、文化、逸話などさまざまな分野におよび、ここが本書のいわば「読ませどころ」になっている。私は日頃ヨーロッパの歴史に親しむことが多いので、前半部で取り上げられている君主、皇帝、皇后、戦士の衣装や、祝祭服・儀礼服の類は、写真や挿絵などで接する機会も少なくないわけだが、本書後半の「作業」、「農民」、「職業」といったカテゴリーについては、未見のものが多く、作業や労働内容の種類から捉え直した服装、地方や国特有の伝統衣装、とりわけスポーツの制服といった、珍しい素材をことのほか楽しんだ。ほんの一例をあげるなら、「ドイツの飛脚」にあてられた六ページは、簡素で切りつめた表現ながら、ギリシア・ローマ時代から中世・近世ヨーロッパにおける飛脚制度や郵便制度の歴史がわずかなスペースで略述され、著者の豊富な蘊蓄の一端を垣間見せる。スポーツ服をあつかった最後の数ページでは「水着」が登場するが、間近いオリンピックの水泳種目で話題をさらっている評判の競泳用水着を、平井氏の文章の延長線上に置いてみると、意外と奥行きの深い歴史的展望がえられるのもたのしい。

 4.「典拠文献」は、逆に、衣装関係の稀覯本に関する細密な記述である。衣装専門の司書たる著者の学問的知見が披瀝されて、その道の専門家には、たまらなく美味しい箇所であろう。近年、アナル派を中心として展開する社会史のめざましい成果のなかで、服飾に着眼した大部な研究書もちらほら目に付くが、本書はそうした重厚長大路線から心持ち離れたスタンスで、趣味のいい、それでいて腰の据わった教養と含蓄の香りを発散している。ぜひ続編を期待したいところである。 
                        (中部大学教授/18世紀フランス文学・思想・歴史)

                           「図書新聞」2008.8.16(第2882号)より転載
装いのアーカイブズ平井 紀子著
装いのアーカイブズ

―ヨーロッパの宮廷・騎士・農漁民・祝祭・伝統衣装
2008年5月刊
定価3,360円(本体3,200円)
A5・250頁 ISBN978-4-8169-2103-2

 1960年代から40年にわたって、文化女子大学図書館に勤務してきた著者が、中世から近代ヨーロッパの服飾の歴史を紹介する。王侯貴族の着用した宮廷服に加えて、民間の人々の服装を並列することにより、衣装・衣服文化全般を把握することができる。因みに、文化女子大学を含む文化学園は、1923年に文化裁縫女学校として設立され、現在まで、多くのデザイナー、服飾評論家などを輩出してきた、服飾の普及と専門教育を目標に掲げてきた学校である。それゆえ、その付属図書館は、世界を見渡してみても、有数の服飾専門図書館であり、所蔵する資料も貴重なものが多い。

 著者はまえがきで、こう述べている。「服飾の歴史は、まさに人間そのものの歴史ともいえます」。そして「『衣』というフィルターを通して『人間の文化』を見つめなおしてみたい」と。

 取り上げられた図版は60点。巻頭は、フランス王妃マリー・アントワネットの宮廷用盛装にはじまる。服飾版画の代表として知られる図版集『ギャルリー・デ・モード』から選ばれている。劇画『ベルサイユのばら』などでよく見る、スカートが横に膨らみ、豪華な刺繍が施された衣装である。この時代、「マリー・アントワネットがモードの実権を握り、彼女の気まぐれから作られる衣装はフランスのモードとなってヨーロッパ中を風靡した」という。この幅広のスカートは、座席に座る時に、通常の三倍から四倍の場所が必要となり、しばしば「争いの種」にもなった。

 また、ジャンヌ・ダルクの軍服なども掲載されている。美少女として描かれることが多いジャンヌ・ダルクだが、実際には、重い鉄製の甲冑を身につけて、戦場を駆け回っていたことから、「頑強な女性であったはず」と推理する。

 その他、祝祭服や農民服、スポーツ服等を取り上げているが、図像を見ているだけでも、興味深い一冊である。(日外アソシエーツ A5判・255頁・3360円)

                           「週刊読書人」2008.8.8(第2750号)より転載
  
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