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日外アソシエーツの出版物で、雑誌や新聞に掲載された書評や、著編者による自著紹介を記したブログです。

   
カテゴリー「ビジネス技術わざの伝承」の記事一覧
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科学技術振興機構(JST)の『情報管理』9月号(2007 Vol.50 No.6)の図書紹介欄で、「ビジネス技術 わざの伝承」に関する(株)ムトウ常務取締役の武藤隆是さんの記事が紹介されました。

JSTのホームページで全文記事(PDF)が掲載されています。

http://joi.jlc.jst.go.jp/JST.JSTAGE/johokanri/50.388

ビジネス技術 わざの伝承「ビジネス技術 わざの伝承―ものづくりからマーケティングまで」
柴田亮介著  2007年5月刊
四六判・260頁 定価1,980円(本体1,886円) ISBN978-4-8169-2045-5
案内サイト:
 http://www.nichigai.co.jp/sales/biz-waza.html


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ビジネス技術 わざの伝承ビジネス技術 わざの伝承―ものづくりからマーケティングまで
柴田亮介著 2007年5月刊
四六判・260頁 定価1,980円(本体1,886円) 
ISBN978-4-8169-2045-5
案内サイト:
 http://www.nichigai.co.jp/sales/biz-waza.html

 企画(設計、開発、編集などを含む)という仕事は重要で難しいわりに、社会や企業で評価されていません。企画は案ができてしまうと、それを当然のこととしてその後の仕事が続きます。仕事が終了して打ち上げる際には、企画者に声がかかることは稀です。なぜなら、企画はかなり前のことで皆の頭の中から忘れ去られていることが多いのです。そのような存在、役割としか評価されていないことが残念です。そして、再び新しい企画の仕事がきます。企画がなければ何もスタートできませんから、依頼者は平身低頭してきますが、のどもと過ぎれば・・・・・、忘れてしまうというような扱いをうけます。どうしてこのように企画者の立場、社会的地位は弱く低いのでしょうか。

電通入社後の体験

 企画はいつも新しい仕事です。ですから、マニュアルというようなものはありませんし、必要がありません。しかし、いつも企画をゼロから始めているということも疑問に思っていました。企画の上位の概念、構造システムがあるのではないか、ということです。私が電通の3年目に担当したMAPシステムの開発を思い起こしてみますと、それはまさに企画のための計画システムであったのです。MAPとは、Marketing & Advertising Planning Systemの頭文字を取って付けられた、マーケティング体系に位置づけられた広告計画の立案作成のシステムです。MAPシステムに沿って計画していくと、どんな広告計画も作成できるという画期的なものでした。若い人たちにとっては実に心強い味方となって広告実務の向上に大きな働きがありました。しかし、ベテランにとってはそれまで培った自分のノウハウが否定されたように映ったのでしょうか、多くのベテラン企画者が反発をもったことも事実です。また、MAPシステム自体もまだ荒削りであったことも反発の原因であったと思います。社内では、その後社員教育に使われつつも次第に誰もMAPという言葉も口にすることがなくなり、皆から忘れ去られていきました。今思うと、MAPシステムを時代の変化や要請に先駆けて改良、発展させていれば、電通、いや広告界・産業界の大きな財産になっていたのではないかと思っています。

企画の<わざ>の伝承

 それでは企画のノウハウ、わざをどのように発展させ、次世代へ伝承していったらよいのでしょうか。ものづくりのわざに比べて企画のそれはわかりにくいという弱点をもっています。ものづくりの製造工程には型があり、製品は力強く<わざ>を表現しています。一方、企画のアウトプットは多くの場合、紙やコンピュータの画面上に表されるだけなので、その働きや効果がみえにくくその<わざ>を理解することは難しいでしょう。また、出来上がった企画書を見ると、これなら自分にもできそうだ、と簡単に思う人もいます。これはコロンブスの卵です。企画の仕事は個人の能力に負うところが大きくて、その難しさや苦労を他の人が理解し触れる機会ことが少ないことが、他者に理解されにくい原因ではないでしょうか。

風姿花伝にヒントを得る 

能の芸を後世に伝えようとして世阿弥が書き表した“風姿花伝”は、優れた指導書です。「能の本質は<花>である」と明快に表現し、芸の頂上へたどり着くための心構えを表しています。花とは能がめざす目標像です。十代から二十代は若い美しい演者自体が花となりえますが、三十代から四十代になると自分が<花>をつくりださなければなりません。培った芸の確かさで花を表現せよ、と世阿弥陀はいっています。老人になっても若者を演じながら芸風、品格のある舞台をつとめ観客からも絶賛を浴びる芸、これが究極の芸 <花>であるというわけです。花は四季折々に咲いて散りその美しい姿を失っていく、だから人々は花を美しく哀れにおもいます。花の美しくも哀れなさまを演じることこそ、能の芸です。そして「秘すれば花なり、秘せずは花なるべからず。秘するによりて大要あるが故なり」と世阿弥陀は意味深長な言葉を残しています。何事であれ一芸に秀でるまでは、疑問や苦悩が付きまといます。これに解答をしてくれる人はいません、これが古典芸能の稽古修行のありようです。「疑問を問う」のではなく「芸を悟る」を本道としているからです。至高の芸は、芸達者が悟る、しかないということです。 

 風姿花伝は企画の仕事にも十分参考になることがたくさんあります。企画も名人、達人が秘すればこそ(あまり表現されることがないので、いつも秘になっています)、何か秘密、わざ、コツがある、と多くの人は思います。つまり能の花、究極の<わざ>です。企画マン、舞台人共通の目標です。そして、風姿花伝は、よくある指導書のようにいたずらにこまごまと書き連ねるのではなく、役者の態度、心構えという役者の根本を押えているのが特徴です。ものづくりに比べ企画は、その土台となる<型>をもっていないことが指摘できます。日本の古典芸能は400~500年にわたって至高の芸を伝承してきました。その伝承の基盤は<型>です。師は型を通して弟子を教え、弟子は師の教える型をまねることから修行が始まります。弟子は、教えられた型が充分自身に身についたとき、改めて自分の型を新しく創造する修行に向かいます。多くの名人、達人の舞台や稽古をみて、自分の芸を磨かねば一流の芸達者にはなりません。企画の<わざ>を深耕し、発展させるためにも、<型>の開発が欠かせません。丁度、MAPシステムは、企画の<一つの型>に相当すると思います。次世代に企画の<わざ>を伝承するためには、古典芸能が培ってきた伝承のための創意工夫に多くのことを学ぶ必要があります。

企画の<型>はメソドロジー

 風姿花伝は、能の芸を伝承する<型>の役割を担っています。この型は、時代を超えて観客の期待にこたえるために“融通無碍”に変容していく広い意味での型、つまり型であって型でない、といえます。まさに、伝承のための<型>は、日本人的な感覚で大きく捉えるべきでしょう。風姿花伝は、能芸の頂上へ向かうための考え方(心構えを含む)と方法を体系化し、その内容を問答形式などによってわかりやすく説明しています。これに加えて常に新しい感性と工夫を組み入れるように厳しく教えています。私は、風姿花伝はマニュアルを超えたメソドロジーだ、と思います。建築、教育、出版、営業、マーケティング、システム開発など、個人の<わざ>が大きく働く仕事には、メソドロジー開発が欠かせないと思います。いつも問題解決がゼロからスタートしているようでは、各分野におけるわざの深耕、発展ができないばかりでなく、これからの社会ニーズや市場競争の要請にこたえていくことはできない、と思うからです。

 この本で紹介しているのはメソドロジーの原型であり、マーケティングリサーチ プランニングについてはさらに具体例を挙げメソドロジーのイメージをはっきりさせようと試みました。私は、各分野でメソドロジーを応用開発していくことを提案します。この本がきっかけとなって、本格的なメソドロジー議論が沸き立つように期待しています。  <柴田亮介>

ビジネス技術 わざの伝承ビジネス技術 わざの伝承―ものづくりからマーケティングまで
柴田亮介著  2007年5月刊
四六判・260頁 定価1,980円(本体1,886円)
ISBN978-4-8169-2045-5
案内サイト:
 http://www.nichigai.co.jp/sales/biz-waza.html

 仕事で一人前のプロになるということは、状況判断、危機管理、目標をイメージするなど、言葉では表現しにくい「仕事のわざ」を体得して初めて認められると言えよう。能や歌舞伎などの伝統芸能では、名人の「わざ」を伝えるためにまず「型」を重視する。弟子は型を「まねる」ことから始めるという。型が自分のものになったら、学んだ型に囚われることなく、自分自身にふさわしい型を創意工夫し、新しい型へと成長・発展させていく。

 本書は、この古典芸能の「わざ」の伝承にヒントを求め、仕事術、生産技術・技能のノウハウを次世代へどのように伝えるべきかという問題について、真っ向から取り組んだ格好の書である。

 団塊の世代が会社を去っていく2007年問題。元・電通マンである著者が、マニュアル化されにくい仕事の勘所(かんどころ)について、具体例を交えて指摘する「わざ」の伝承方法は、新入社員から経営者まで、多くの人々にとって示唆に富む内容であろう。

                           「出版ダイジェスト」2007.5.21 2面より転載

  
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