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日外アソシエーツの出版物で、雑誌や新聞に掲載された書評や、著編者による自著紹介を記したブログです。

   
カテゴリー「文芸雑誌内容細目総覧」の記事一覧
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文芸雑誌内容細目総覧-戦後リトルマガジン篇 「文芸雑誌内容細目総覧―戦後リトルマガジン篇
 勝又浩監修 2006年11月刊
 定価44,100円(本体42,000円)
 A5・810頁 ISBN4-8169-2010-2


 戦後文学と文学者の研究のための欠かせないツール
 内容細目収載誌の数の多さで、従来のものをはるかに凌ぐ

 近年、インターネットの普及によって文献の探索は非常に便利になった。文芸雑誌についても国立国会図書館をはじめ全国の公立図書館や文学館、大学や研究所の図書館の大部分の詳細な所蔵状況が居ながらにして検索できる。

 しかし所蔵状況は簡単にわかっても、ごく一部の雑誌を除いて、内容はわからない。目次や細目の分野では依然として紙に印刷されたデータが不可欠のツールになっている。

 戦後の文芸雑誌の掲載作品を調べるのに、いちばんよく使われているのは、日本文藝家協会編の『文藝年鑑』であろう。しかし『文藝年鑑』の総覧は出ていないから、何年にもわたって調べるためには、年鑑一冊一冊を繰らなければならない。また、とくに戦後十年間くらいは、夥しい数の文芸雑誌が出たにもかかわらず、年鑑の収録範囲は一部に限られている。大出版社から継続的に発行されている雑誌以外の、いわゆる同人雑誌、半商業雑誌などには、現在でも収録の対象から外されているものが多い。

 そのような戦後の主要な「リトルマガジン」の細目を集め、巻末に執筆者索引を付した本書は、久しく刊行の待たれていた、きわめて重宝なデータブックである。

 「リトルマガジン」という言葉はやや曖昧だが、監修者の勝又浩氏によれば、「大出版社が社名をかけて発行する全国レベルの商業文芸雑誌ではなく、かといって一地域やサークル内に留まる同人雑誌やミニコミ誌というのでもない、その中間を埋めるもので、小さいけれど、そしてあまり知られることもなく終わった場合も多々あるが、性格としては十分開かれていた雑誌」というほどの意味であり、表通りではなく、横丁あるいは裏通りの文学史を書いた野口冨士男が永く編集にかかわっていた『風景』などがその典型だという(もっとも『風景』は一九六〇年の創刊から七六年の終刊まで『文藝年鑑』に主な目次は登載されていたから、横丁あるいは裏通りの雑誌というのはちょっと無理かもしれない)。

 戦後の文芸雑誌の紹介としてはこれまで福島鑄郎『戦後雑誌発掘』(昭47.8、日本エディタースクール出版部)、紅野敏郎・栗坪良樹・保昌正夫・小野寺凡『展望戦後雑誌』(昭52.6、河出書房新社)などがあって、それぞれに有益だったが、あくまで概観や展望であって、各雑誌の細目までには至っていなかった。

 二十年ほど前から戦後の文芸雑誌を一冊一冊コツコツ集め、その細目を大学の紀要に連載していた大屋幸世氏は近著『日本近代文学書誌書目抄』(2006.3、日本古書通信社)に『風雪』『新文藝』『肉体』『個性』『文藝時代』『文学会議』など19誌の「戦後文藝雑誌細目抄」を収めた。そのなかには本総覧には洩れているものが7誌もあって、さすがに大屋氏の目利きぶり、博捜ぶりをうかがわせる。

 しかし本書は、何といっても内容細目収載誌の数の多さで、そうした従来の展望や細目抄をはるかに凌いでいる。言うところの「リトルマガジン」を中心に戦後に創刊、続刊、再刊された文芸雑誌の中から、現在も継続中のものを除いて終刊の明らかなもの119誌、1655冊を創刊順に収載している。戦前に創刊されて戦後復刊された『風報』を例外とすれば、1946年1月創刊の『新文藝』から1986年10月創刊の『辺境〔第3次〕』までの118誌である。

 主要な雑誌を順にあげれば、『人間』『文藝時標』『文明』『素直』『世代』『高原』『文学季刊』『風雪』『文学会議』『日本小説』『綜合文化』『明日』『個性』『文藝時代』『表現』『方舟』『文藝往来』『文学51』『秩序』『聲』『批評』『円卓』『試行』『宴』『無名鬼』『犀』『文学的立場』『季刊審美』『南北』『季刊藝術』『ポリタイア』『辺境』『文体』『使者』など。ただし詩歌・俳句・演劇・映画などの周辺雑誌や、『近代文学』『新日本文学』『文藝首都』『文学者』などの長期間にわたる雑誌で、総目次などの入手が容易なものは省いたという。

 誌名を眺めただけでも壮観である。今後、本書が戦後の文学と文学者についての研究のための欠かせないツールになることは間違いない。

 以上を特筆大書した上で、最後に若干の注文を書き添えておきたい。これだけ多くの雑誌を取り上げても、まだ洩れている重要な雑誌があることは、前掲『展望戦後雑誌』に収められた昭和26年以前創刊の雑誌が342種に及ぶことを考えただけでも当然かもしれないが、その中に『黄蜂』『磁場』『新思潮』『知識人』『同時代』『文学草紙』『文学の世界』『文章倶楽部』など欠かせない雑誌も含まれている。小説中心で、詩歌、演劇関係が省かれているのは戦後文学全体を考えた場合、やや理解に苦しむ。全体に東京中心で地方誌がないがしろにされている。また発行所は記されているが発行地が記載されていない。作品のジャンルについて評論、随筆、書評、エッセイなどが明記されていない。『文学者』など総目次はないはずなのに省かれた理由がわからないものがある、など、など。

(日本近代文学 曾根博義)
                          「図書新聞」2007.2.10 4面(芸術)より転載
 

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