日外アソシエーツの出版物で、雑誌や新聞に掲載された書評や、著編者による自著紹介を記したブログです。
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「図書館でこんにちは
―本に出会い、人に出会える楽しい場所へ」
近江哲史著 2007年12月刊
定価1,995円(本体1,900円)
四六判・250頁 ISBN978-4-8169-2083-7
これは、近江哲史さんの図書館に関する3冊目の本である。これまでに、『図書館に行ってくるよ』、『図書館力をつけよう』の2冊は、かなり話題を呼んだ本であったが、今回は、利用者として、積極的に地元の図書館活動に関与してきた実績を、かなり具体的に書き、それらをもとにして、次のステップ、すなわち図書館運営にまで関わろうとする意欲的な内容である。
著者は、最初は単なる一利用者に過ぎなかった。しかし、ライフワークの一つである「自分史」の執筆指導、実践などを通じて、図書館のヘビーユーザーになり、地元の公共図書館のボランティア活動の一翼を担うようになる。しかし、図書館のボランティア活動は難しい。あまり活発に活動すると、図書館運営に迷惑をかけることにもなる。限定された範囲でしか活動できない。
そのうちに、ボランティア団体からの代表として、図書館協議会の委員になった。しかし、この協議会は図書館法に書かれているにもかかわらず、形式的で、実効性の無いものであった。そこで、図書館協議会を活性化することを始めた。協議会とは別に懇話会を開き、委員の意思疎通ができるようになったために、実質的な協議会が行われるようになった。
そして、公開読書会を開催することになった。国全体としても、文字・活字文化推進機構が設立されたこともあり、読書推進のための活動は、ますます盛んになっていくことであろう。
著者の属するボランティア団体は、さらに進んで、NPO法人をつくり、図書館業務運営受託の準備を始めた。これは2007年4月のことである。まだ、業務受託ができたわけではないが(少なくとも、この著書が書かれた時点では)、単なるボランティア団体ではない、実践へと動き始めたのである。
本書では、後半で、「図書館は宝の山よ」「宝の山をもっと豊かに」という二つの章を設けて、図書館専門家や現場の人たちがあまり気をつけないが、重要なポイントを指摘し、一般の人が、もっと豊かな生活を送るには、いかに図書館が重要であり、身近な存在なのかを、事例をあげて、分かりやすく説いている。
図書館関係者ならびに、一般市民がこの本を読むと、これまでとは、全く違った「新しい図書館像」を発見することができる。
(戸田光昭・とだみつあき)
記録管理学会ニューズレター<資料紹介>より転載
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