日外アソシエーツの出版物で、雑誌や新聞に掲載された書評や、著編者による自著紹介を記したブログです。
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「鉄道・航空機事故全史」
災害情報センター・日外アソシエーツ共編 2007年5月刊
A5・510頁 定価8,400円(本体8,000円) ISBN978-4-8169-2043-1
案内サイト:
http://www.nichigai.co.jp/sales/accident.html
航空機は他の乗り物と違って運航中に調子が悪いから、もしくは前方で事故や渋滞があるからといって立ち往生することができません。飛び続けるか落ちるかしかないのです。つまり、何があっても飛び続けて最寄りの空港に着陸しなければなりません。それ以外の選択肢がありません。従って機体の設計、整備、乗務員の訓練と全てフライト前に安全がいかほどのものか決定してしまいます。
1985年の御巣鷹事故はその最たるものでした。油圧系統は故障や破損に備えて2系統、3系統をそなえていて1つが故障しても機体の操作には支障が無いものでした。ところがあの事故は垂直尾翼自体が破損してしまいそこにつながっている油圧系統が全て破損してしまい操縦不能に陥りました。事故原因になった圧力隔壁もボーイング社の修理ミス、JALの点検整備不足と重なりました。さらにパイロットも油圧系統が麻痺して垂直尾翼が破損した状態を想定した訓練は受けていなかったでしょう。残念ながらいくら綿密に考慮していても機能の故障以外はなかなか思い及ばないものです。ですから過去のどんなに些細な事故や故障もデータベースに蓄えて対策がたてられます。余談ですが圧力隔壁の修理に至った尻もち事故に関しても現在は全ての機体の後部に検知プレートが取り付けられていてどんなに軽微な接触も見逃さないようになっています。
本書は事故の経緯、事故の影響と対策、犠牲者や資料に至るまで、克明に書かれています。残念ながら現在の安全はこうした多くの犠牲の上に成り立っていることを痛感します。最近那覇空港において炎上事故が起きましたが、この原稿を書いている時点では整備ミスで燃料タンクにボルトが刺さったというのが原因とされています。JALが20年以上前に経験した整備の技量や安全意識の向上が中華航空に求められています。報道の通り、犠牲者が出なかったのは奇跡でしかありません。
白鳥詠士
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