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日外アソシエーツの出版物で、雑誌や新聞に掲載された書評や、著編者による自著紹介を記したブログです。

   
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『人物書誌大系 吉村昭』について (編集部 岩崎)
『人物書誌大系 吉村昭』について (日外アソシエーツ編集部 岩崎)

 2009年夏、編集部長から「木村暢男さんという人が長年私家版で制作してきた『吉村昭年譜』(以下『年譜』とします)を個人書誌シリーズ「人物書誌大系」シリーズに入れて刊行する。担当希望者は手を挙げよ」というお達しが出されました。
 
 吉村昭といえば、同僚は「誠実に史実を追った記録文学を書いた凄い人」、営業本部長は「「少女架刑」とか初期短篇集の作品が好きなんだ」、知人の評論家は「『孤独な噴水』で主人公がボクサーなのに“私”と言っているのが面白くて、以来好きになった」と語る作家であり、どの人も一様に敬意をもって語るのが印象的で、とても興味のあった作家です。これは千載一遇の機会と、担当を希望しました。

 が。この時点で私は、吉村作品は『関東大震災』しか読んだことがなく(そしてそのあまりの凄烈さに呆然としたものでした)、かつ “個人書誌”を担当するのも初めてで、内心かなりの不安を持っていました。しかし、木村さんの『年譜』を拝読し、さらに木村さん本人にお会いして、不安はかき消され、「これは大丈夫!」と確信が生じました。私家版とは思えない素晴らしい密度の書誌。さらに木村さんのお人柄。著編者がいる書籍の成功度はその著編者の人柄で決まると勝手に思っていますが、木村さんはとても話しやすく、かつ吉村昭に大きな愛情をお持ちの方だったのですから。

 ~中略~
 
 ここで、少しばかり、本の内容を紹介させていただきたいと思います。
 
◇I.生涯と業績
 年譜形式でその年の吉村昭の業績・主要作品・社会の出来事をまとめたものです。受賞や闘病エピソードから、幼稚園の入園手続きを自分でやっていたり、倉本聰のお宅でバーベキューをしたりという楽しいエピソードまで。吉村昭という作家を知らない人、あるいは硬派な作家というイメージを持っている人には、まずこれを読んでもらえば興味を持ってもらえるのではないか、身近に感じてもらえるのではないか、と思うような、読んで面白い年譜です。
 
◇II.著書・作品
 新聞・雑誌などに掲載された作品、単行本(収録作品を含む)、翻訳本、出演テレビ番組、講演などのデータ、計2227件を掲載。単行本未収録作品も多数。全業績を総覧できます。また、図書館などで探して読む一助にもなります。

◇III.座談・対談・インタビュー・その他
 吉村昭が出席した座談・対談・インタビューなどの、掲載紙誌・収録本データ(対談者やインタビュアー名を含む)、計226件を掲載。対談者は新田次郎、城山三郎、橋爪功、田沼武能、小沢昭一などなど多士済々、テーマも小説・戦争・医療から上野動物園・大相撲まで様々です。こちらも単行本未収録多数。
 
◇IV.書評・関連記事
 一転して、吉村昭について書かれた論・記事の掲載紙誌・収録本データ(論者・評者名を含む)1844件です。国内外問わず、実に多くの方が吉村昭について語っています。収録データのタイトルを全部読めば吉村昭という人物がどう捉えられてきたか浮かび上がってくるような記録でもあります。
 
◇V.文庫解説
 解説が付されている文庫本データ109件です。どの文庫に誰がどんな解説を書いているのか一覧できます。
 
◇VI.弔辞
 大河内昭爾、大村彦次郎、高井有一、中村稔各氏が「お別れの会」で読まれた弔辞を掲載させていただきました(『年譜』には未掲載)。是非ファンの方々に読んでいただきたい、哀惜の念溢れる弔辞です。
 
◇VII.索引
 本文中の著書、作品、書評を対象とした索引です。ある作品が「Ⅱ.著書・作品」「Ⅳ.書評・関連記事」のどこに出現するかが分かります。作品自体のデータはもちろん書評データもまとめて検索できます。
 
◇序文「年譜の重み」
 津村節子さんに執筆いただきました。『年譜』に対する吉村昭の反応や、本書誌の意義などについて、読み応えのある、また、書誌の巻頭にふさわしい素晴らしい序文をお寄せいただきました。
 
◇口絵写真
 津村さんに所蔵の写真から選定いただきました。口絵は黒ずくめで一見ちょっと怖い感じ、しかしよくよく見れば何か困っているようで、いい写真だなあと思います。これは新潮社から出た選集のパンフレットに使われた写真とのこと。口絵裏には6点。弟さんとの写真、中学卒業時の写真、ご自宅で凧に囲まれている写真、雪原を歩く写真、文学碑除幕式にて津村さんとの写真、書斎での写真を掲載しました。
 
 ちなみに、この書斎写真は、当初誰が撮影したのか分かりませんでした。新潮社や文藝春秋、記念館建設が予定されている荒川区の方に伺っても不明。どうしたものかとご相談したところ、津村さんが別の候補写真を提示くださいました。同じく書斎写真で、榊原和夫さんの写真集に掲載されているもの。構図・服装が不明写真と殆ど同じ。あれも榊原さんが撮ったものでは!と早速、榊原さんの消息を調査してご遺族に尋ねたところ、めでたく確認がとれ、快く掲載許諾をいただけました。個人的に思い出深い写真です。
 
 以上、長々とした説明になりましたが、実物に勝るものは無し、是非お近くの図書館にリクエストいただき手に取っていただけたら幸いです。
「吉村昭研究」第十号・記念増大号 p45~48より抜粋
 
人物書誌大系41 吉村昭人物書誌大系 41 吉村昭
木村暢男〔編〕 A5・470p 2010.3刊
定価19,110円(本体18,200円)
ISBN:978-4-8169-2240-4



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